ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

●3●国家賠償請求権第4節基本的人権の保障? 135●4●刑事補償請求権●関連憲法条文第17条〔国及び地方公共団体の賠償責任〕何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。(国家賠償法? p.37)●関連憲法条文よくりゅうこうきん第40条〔刑事補償〕何人も,抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けたときは,法律の定めるところにより,国にその補償を求めることができる。(刑事補償法? p.37)1多摩川水害訴訟けっかい概要1974年の台風16号による多摩川堤防決壊かおくりゅうしつあこまえで,家屋流失などの被害に遭った東京都狛江市のかせん住民34人が国の河川管理に落ち度があったとして,国を相手に総額4億6600万円の損害賠償を求めて提訴。〔一審・東京地裁判決〕(1979.1.25)国の河川管理に落ち度ありとして,住民勝訴〔控訴審・東京高裁判決〕(1987.8.31)国に落ち度はなかったとして,住民敗訴〔上告審・最高裁判決〕(1990.12.31)控訴審判決を破棄,高裁に差し戻し〔東京高裁・差し戻し審判決〕(1992.12.13)「水害予測は遅くとも昭和46年にはできたのに,おこた国は必要な改修を怠った」として,国の河川管理責任と過失を認め,国側の控訴を棄却,あらためて国に3億1,000万円の支払いを命じた。2国の責任をめぐる主な水害訴訟判決判決水害名(発生地)結論☆●★○75.17加治川(新潟)1審○…………76.12大東(大阪)1審○国国国国77.12大東2審○のののの責管責管79.11多摩川(東京)1審○任理任理81.10加治川2審○を責を責11志登茂川(三重)1審○認任否任82.12長良川安八(岐阜)1審○定を定をす84.11否す認大東上告審★る定る定5長良川墨俣(岐阜)1審○方方85.13加治川上告審●向向8平作川(神奈川)1審●のの差差87.14大東差し戻し2審●しし6平野川(大阪)1審●戻戻8多摩川2審●しし89.13志登茂川2審●90.12長良川安八2審●2長良川墨俣2審●6大東再上告審●12多摩川上告審☆91.14平作川2審●92.12多摩川差し戻し2審○93.13志登茂川上告審●94.10長良川安八上告審●10長良川墨俣上告審●(『朝日新聞』1994.10.27)1刑事補償の補償内容(刑事補償法第4条)1抑留・拘禁1日1,000円以上12,500円以下2死刑本人死亡による財産上の損失額に,3,000万円を加えた額以内かりょうついちょう3罰金・科料・追徴徴収した金額に年5分の金利を加算ぼっしゅう4没収処分前ならば返付,処分後ならその物の時価相当額注:12は,上記範囲内で裁判所が事情を考慮して定める。2刑事補償の例事件名拘束日数×1日の補償額=総額1加藤老事件5,612日×3,200円=1,795万8,400円2免田事件12,599日×7,200円=9,071万2,800円3財田川事件10,412日×7,200円=7,496万6,400円注:1日の補償額は,現在は最高12,500円であるが,上記事件はいずれも,補償決定時の最高額である。(最高裁判所調べ)資料を読む増加する国家賠償訴訟国家賠償法は,憲法17条の要請によって制定されたもので,公務員の不法行為によって損害を受けたり,道路・河川などの設置や管理などに欠陥があったため損害を受けた場合の国または公共団体の賠償責任を定めている。賠償請求訴訟は,水害,薬害(次ページ「エイズ訴訟」参照),道路公害など近年増加の傾向にある。水害訴訟では,1984年の大東訴訟最高裁判決が,河川の管理責任をせまくとらえ,住民勝訴の控訴審判決を差し戻して以来,下級審でもこれに追随する判決が増えていたが,92年12月の多摩川水害訴訟の差し戻し審では,住民勝訴の判決が下され,これまでの傾向に歯止めをかけたものとして注目された(3)。補償はされても返らぬ日々刑事補償とは,憲法40条の規定に基づいて,無罪が確定されたとき,その間の抑留・拘禁の日数などに応じて国が補償を行う制度である。刑事補償法は補償の要件や手続きなどを定めている。なお補償内容はしばしば改正される。資料のように,長期にわたった拘留・拘禁者には多額の補償金が交付される。刑事補償を必要としないような慎重な捜査や起訴,裁判が切望される(4)。第1編現代の政治